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2018年9月 大規模修繕

RRP小説 第1話

2018年9月 猛暑 いつになったら終わるのだろう

「え、なんで見積出て来ないんですか?」

今回で10回目となる毎週火曜の定例会議の場で、このところ決まり文句になってきたセリフをまた唱えた。

「営業に確認しているんですが、ちょっと遅れておりまして...」

「先週もそう言ったじゃないですか」

「はい、申し訳ありません...」 

気まづい空気の中、時間だけが経過していく。

ただ猛烈に噴き出しているエアコンの冷気と、けたたましい外壁に穴を開るインパクトドライバーの轟音だけが鳴り響いている。

 思い起こせば2018年春RRPの会議で、そろそろ大規模修繕工事の業者さんを選定しなければという話になった。

大規模修繕工事を自ら担当するのは今回が初めてなので、わからないことだらけなのだったが、必要のない工事まで組み込まれて修繕費用が膨らむのだけは避けたかった。そこでRRPメンバーの建築士金岡さんと相談し、こちらで最低限のメニューを組んだ仕様書をいくつかの業者さんに提示し、その中から金額を含め最も条件にあう業者さんを選定しようということになった。

 

業者さんを決定してから実際に建物を調査し、調査の結果にもとづいて修繕項目を追加していけば良いという考えだった。

 6月中旬、RRP計画のため退去をしてもらった空室に、数時間おきにスーツをきた男たちが入れ替わり訪問してきた。この日はRRP修繕工事の業者選定のため3社から見積提出とプレゼンを受ける日だった。実際には1社は見積を郵送してくるのみで訪問はなかったので、訪問プレゼンは2社のみであった。

 最初に訪問してきたのは株式会社ワンダフルビルディングだった。入ってくるなり礼儀ただしく、プレゼン資料もしっかりしている上、話し方も流暢でとても好印象だった。金額も3社の中でとりわけ遜色なく、この業者さんにお願いしても良いのではないかと感じた1社目だった。

 次に訪問してきたのは、株式会社後藤だった。事前になんどか事前調査で訪問してきていたので、メインの営業担当の佐渡島さんの顔は覚えていた。今回は佐渡島さんの上司にあたる檜木部長

が同席された。プレゼンはちゃんとした資料もなく、特に準備されたとは思えないあたり触りのない内容で、結論から言うと、がんばりますということなのかなという印象だった。

すべてのプレゼンが終了した頃、すでに15時をまわっていた。

「どうでしたか?どこがいいと思います?」と建築士の金岡さんに聞いた。

金岡さんは頭を掻きながら、

「難しいですねー、僕は株式会社後藤だと思います。どうですか?」そう聞いてきたので、

「私はワンダフルですね。資料もきちんと準備してきているし、担当者の印象も悪くないです。」と答えた。

「そうですね、でも今回のプレゼンだけで決めてしまうのは危険があると思います。これまでの工事実績や会社の規模も考慮したほうが良いと思っているんです。たしかに株式会社後藤の今回のプレゼンは準備不足だな、という印象はありました。どうでしょうか、後藤にもう一度プレゼンを実施してもらうのは、その時に実際に現場を担当する現場代理人も同席してもらうように依頼して、その時の印象で最終的に判断するのは」と金岡さんが提案してきた。

「うん、それがいいかも。」

かれこれ1時間もこの件について話あってきた。もう一度株式会社後藤に提案してもらうことにした。

 数日後、前回の2人に加え現場代理人の赤塚さんも一緒に訪問された。前回と同じRRP5階の空室にスーツを来た男性2人と作業服の中年男性1人を正面にし、挨拶もそこそこに今回の修繕に関するプレゼンを聞いた。今回は前回とかわり、プレゼン資料や会社案内などしっかり準備されており、主にプレゼンをしたのは営業の佐渡島さんだった。現場代理人の赤塚さんは何もしゃべらず、ニコニコしていた。およそ30分の提案を聞き、深々としたお辞儀をして靴をはく3人の男性を見送った後、我々はしばらく相談し最終判断を下した。

 我々は、最終的に株式会社後藤に今回の修繕を発注することにした。

 発注してからの打ち合わせで営業の佐渡島さんに、今回の修繕工事は銀行の融資を受ける予定です。銀行融資を申請する関係で、早めの段階で実際にかかる修繕費用を銀行担当者に申告する必要があります。なので、足場が組まれたあと早急に建物の状態を調査実施し概算でどのくらいの追加費用が必要なのか算定することはできますか?と相談していた。

「はい、できると思います。」

佐渡島さんはそう言って、感じよく答えた。

それ以外の我々に質問にも印象良く対応してもらい、ここに決めて良かったなと思えた。

「それではまずは住人さんへの説明を実施、近隣への挨拶を行い、工事は来月早々にスタートいたします。」と佐渡島さんが言った。

 その言葉とともにRRPの修繕工事はスタートすることになった。

 時は戻り定例会議の場、

「早い段階で概算見積が出るって確認したんですよ」と私。

「。。。。。。、もう一度確認してすぐ準備します。」と現場代理人。

「概算が出ないと銀行に融資金額を伝えられないんですよ、そうすると支払いが遅れてしまい御社にご迷惑をかけることになるのでいってるんです。」

こんなやりとりをもう数週間続けていた。

それでも一向に実際にかかる修繕の追加見積はまとまらなかった。

なんで出て来ないんだろう。

我々にとっても初めてのことで、こういう工事項目を追加するような進め方に問題があるのかもしれないと自らを反省したりしながらも、支払いに影響することなのでどうしたら良いか胃がキリキリする日々であった。

そんな状況でも工事は粛々と進んでいき、当初の工事終了予定となる9月末を迎えたのであった。

そしてここからの工期延長に、さらなる悩みが次々と舞い込んでくることを我々はまだ知るよしもなかった。

[RRP小説 この作品はフィクションです]

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